[1] 病院を受診しようと考えている人へ
「どんな症状があれば産婦人科へ行ったほうがいいのか」、という質問には、簡単には答えられません。きっと、100万人の一人ひとりに、その人が産婦人科に向かう「時」というものがあるような気がします。
(1)子宮内膜症の自覚症状
その上で参考にしてほしいデータが、「正しい子宮内膜症の医学と医療コーナー」にある、「自覚症状のグラフ」です。このデータは、医学界の子宮内膜症解説にもよく使われています。なぜかというと、確定診断者(手術で確かに内膜症だと診断された人)が約600人も集まったデータは、このJEMA2001年データ以外、日本にはないからです。
まず、このデータの見方ですが、たとえば1位の月経痛は88%ですね。これは、88%の人が激痛があると言ってるのではありません。月経痛があるかないかと聞かれて、あると答えた人の割合です。そう、確定診断者の中にも、12%は月経痛がないのです(不妊が主問題の内膜症の女性たちの一部だろう)。
もう一つの注意点は、これは、確定診断された女性たちが、長年の内膜症の人生で体感している症状たちではあっても、内膜症の病巣や癒着に直結した症状だけかというと、そうではないということです。『あなたを守る子宮内膜症の本』には詳しく解説していますが、3位のレバ-状の塊が出る、7位の月経量が多い(過多月経)、11位の不正出血などは、子宮腺筋症の特徴です(子宮筋腫の一部にも)。
このことから、内膜症の人のお腹の中に、腺筋症や筋腫が一緒にあることも多いとわかるのです(腺筋症は内膜症の親戚、筋腫はこの2つとは赤の他人)。
以上のことをふまえた上で、自覚症状グラフを参考にして下さい。
(2) 子宮内膜症とは関係ない月経痛
ふつう、月経は痛くありません。トイレやショーツに出血してから、あっ始まった、と気づく人も多いもの。
すると、月経痛があれば、そく病気かというと、そうとも言えないのです。
出産を経験していない人の子宮口は、経験している人と比べると狭くて堅いので、月経血(はがれた子宮内膜と血液)が押し出されるだけで痛む場合があります。また、子宮が後屈している人は(内膜症がなくても後屈する人がいる)、月経血の流れがスムースにいかないので、やはり痛むことが多い。また、何らかの下腹部手術(盲腸、帝王切開など)の経験者のお腹の中には、術後癒着ができていることが多く、子宮と周りの臓器や腹膜(お腹の内側の壁)が癒着していると、子宮がいびつに引っ張られたり、左右に傾いていたりすることも多く、月経血の流れがスムースにいかなくて、やはり痛むことがあります。これらは、内膜症やその他の病気とは関係のない月経痛です。
自分の月経痛が何から来ているのか、自分で判断するのは難しいですが、月経痛そく内膜症と考えてしまうと、いらぬ医療を受けるはめになることも実際に多いので、ちょっとご注意。
(3)子宮内膜症の月経痛や下腹部痛
さて、市販の鎮痛剤を使って、月経の前日、初日、2日目あたりの月経痛(腰痛や頭痛が伴うことも多い)がおさまっているなら、あまり心配しなくていいかもしれません。
しかし、市販の鎮痛剤を使っても仕事や学校に行けない人、使っても寝こむ人、1週間も使ってしまうほど痛みが続く人は、内膜症かどうかは別として、心配です。また、下腹部の手術経験がないのに、月経の出血が終わってから排卵に向かう時期も下腹部痛がある人や、性交痛か排便痛(痔の痛みと区別必要)のどちらかがある人は、内膜症が心配されます。月経のたびに脂汗を流しているとか、転げまわっているなどという人は、もちろん何らかの問題があります。
以上のような人は、信頼できる産婦人科へ行ってみましょう。ただし、これらのような症状が1回あっただけではなく、3~6回以上続くようになってからにしましょう。
(4)診断をするということ
ただし、日本の病院の中には、適当な診断で高い薬を処方し、毎日の収入をあげなければやっていけないところが、産婦人科だけでなく、どの科でも驚くほどたくさんあります。わざとやっている医師と勉強不足でやってしまう医師とその中間タイプの医師がいますが、日本のあらゆる病気の患者が水増しされたり、反対に病気があるのに診断してもらえなかったりするあまたの現実は、日本の大きな不幸です。
そういう観点から考えると、一概には言えませんが、医師が直接経営について考える頻度の低い、公立病院のほうがいいかもしれません。日本では、内膜症かどうか診断するだけでも、2ヵ所、3ヵ所の病院に行ったほうがいいとも言えるでしょう(セカンドオピニオン、サードオピニオン)。
内膜症では、手術による確定診断ではない診断を臨床診断と言いますが、その3割は内膜症ではないだろうと言われています(誤診ということ)。
(5)初診の心得
初診では、鎮痛剤(「JEMA通信32号/2000年12月」に詳細解説)以外のものは避けたほうが心身には安全です(初診ではせいぜい問診・内診・超音波エコー程度だから、内膜症の診断はあまりできないので、内膜症の治療薬を処方するのはおかしい)。鎮痛剤しか処方しなくて不親切だと思った医師が、実はいい医師ということもあるのです(鎮痛剤しか出さない理由を説明すべきだが)。(※JEMA通信:3年9月10年度からの会員制度廃止に伴い、現在は発行しておりません)
内膜症の薬は、どれも副作用が強く、それを半年使ったからといって治るわけでもなく、費用も驚くほど高いものばかりです(『あなたを守る子宮内膜症の本』に詳細解説)。欧米先進諸国では(医療を語る時には、日本は先進国とは考えないほうがいい)、確定診断(手術で確実に内膜症病巣を確認すること)をしないと内膜症の薬は出しません。そうでない段階でとりあえず出すのは、低用量ピルです。
病気は心身を侵害しますが、医療が余計に心身を侵害することが多いということも、肝に銘じておきましょう。
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[2] すでに治療を経験している人へ
子宮内膜症の最大の問題は、ほんとうの子宮内膜症であれば、現時点の医学・医療によるどんな治療をしても、閉経まで二度と再発させることはないぞ、とは言えない世界的現実です。
(1)医療を変えていく
だから、世界各国に、子宮内膜症の当事者による市民組織があるのです。
日本子宮内膜症協会(JEMA)も、世界の協会たちと同じように、全国でお互いをサポートしあいながら(セルフヘルプ)、事務局では、自分たちに必要な医学・医療を推進したり、心身によくない医療の改善を求めたりという、医学界に働きかける活動をしています。個々の会員(※会員:会員制度は03年9月10年度より廃止されました)の中にも、自分の主治医を育てていこうとしている女性たちがたくさんいます。
こういう6年半の活動の結果、内膜症の医学・医療をよく理解している第一線の医師たちは、JEMAとほぼ同じ考えで内膜症医療を進めていますが、それが、なかなか広がりません。なぜかというと、医療も産業ですから、どうしても経済第一で動く部分があるからです。
(2)日本の一般的な診断と治療は世界の非常識
さて、日本の一般的な内膜症治療というと、ほんとうに内膜症かどうか未確定な診断のままで(臨床診断という)、GnRHアゴニスト(スプレキュア、ナサニール、リュープリン、ゾラデックス)か、ダナゾール(ボンゾール他)という、内膜症、筋腫(添付文書では術前の病巣縮小目的だけに限定)、思春期早発症、乳がんや前立腺がん(がん病巣摘出手術後の再発予防期待)、などに保険適用のある強くて高い薬を、4~6ヶ月、連続使用させるのが大半です(閉経状態にする)。
これらの薬を、確定診断もせず処方したり、確定診断であっても繰り返し処方するのは、世界中でも日本だけでしょう(欧米先進国にも途上国にもそういうことはない)。これらの薬の短期的な効果、副作用、可能性のある後遺症などは、『あなたを守る子宮内膜症の本』(以後『守る本』)ほか、JEMAのいろいろな情報に述べています。
(3)1クールでやめたほうがいい
さて、すでに内膜症という診断を受け(確定診断でも臨床診断でも)、手術なしで上記の薬を1クール(4~6ヶ月の連続使用のこと)使った人で、使用後、最初の月経が再開した時から半年~1年以内に症状が再発した人は(再発病巣の検査確認があった人も)、同じ薬や上記の別の薬をもう一度使うような治療は、やめたほうがいいでしょう。
かなりの初期内膜症の人でないかぎり(たいてい10代後半~20歳前後で最初の内膜症細胞発生がある。症状発症はすぐではない)、これらの薬をどう使おうと、内膜症とさよならできる人はいません。これは、科学的事実です。
また、手術なしで上記の薬を使用し、月経再開から1年以上も再発のない人は、おそらく内膜症ではないので、内膜症のことは忘れてください。
(4)再発(再燃)した時の選択の道
では、再発した人はどうすればいいのでしょうか(薬物治療後は再発といわず再燃という。手術でかなり改善させた1~2年後などを再発という)。
選択肢は、大きく4つあるでしょう。
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